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目的のためには全てを優先しても良いのか?書評:目的への抵抗

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はじめに

現代社会において、私たちは常に何かしらの「目的」に向かって努力しています。

仕事、学業、人間関係、趣味など、あらゆる場面で目標を設定し、それを達成するために努力を続けている。

しかし、その目的を達成するということは、本当に何よりも優先されることなのだろうか?

著者であり、哲学者でもある國分氏は、こう問いかけます。

國分功一郎とは

本書の著者である國分功一郎は、1974年生まれの日本の哲学者です。

早稲田大学政治経済学部卒業していますが、政治学という学問が性に合わずに、哲学の道に傾倒していきます。

東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻で博士号を取得し、哲学分野の研究者として現代社会の閉塞感の分析などを行っています。

 

「目的への抵抗」とは何か

本書は、コロナ下での民主主義について、東京大学で行われた講和と学生たちとの質疑応答をまとめたものです。

現代社会は、あらゆる活動に目的(目標)が設定され、それを達成するための活動はすべてが許されます。

しかし、それは本当に正しいことなのか。

國分氏は、この目的第一主義ともいうべき風潮に疑問を呈しています。

特殊な状況での措置は普段の生活も脅かす

コロナ危機の中では、多くの非民主主義的な制限が数多く行われました。

マスクをしなければならない、外出してはならない、なになにしてはならない等。

あのとき、未知の感染症の拡大を予防するためには、確かに必要な措置だったのでしょう。

ただし國分氏は、それがあたりまえの国や政府の活動だと思ってはならないと主張しています。

あれは、あくまで限定的な特殊な危機的な状況におけるものであり、コロナ制限が解除された今、やすやすと受け入れてはならないと述べています。

「目的への抵抗」の感想

本書は、大学で行われた講和を書き起こしたものなので、語り掛けるような口調が文体になっていてとても読みやすいです。

國分氏は、『暇と退屈の倫理学』(2011年)から哲学と社会との関係性について論述し、この世界に対する違和感を言語化することに長けていると感じました。

世界に対して、なんとなく感じている不安や、不吉な予感がなぜ生じるのか。

その答えの一つになりそうなものの見方を、本書から学ぶことができます。

この思想は、私たちが今の社会において生きていくために役立つヒントを与えてくれるでしょう。