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なぜ我々のシステムは崩壊するのか?書評:巨大システム 失敗の本質

はじめに

現代社会は、電力網、交通システム、金融市場など、複雑な巨大システムに支えられています。

しかし、これらのシステムは私たちの期待を裏切り、大規模な失敗を引き起こすことがままあります。

例えば、スターバックスのハッシュタグ炎上、フォルクスワーゲンの排出量偽装問題、原油流出事故...。

これらの出来事は、一見すると無関係に見えますが、実は共通の「失敗の本質」が潜んでいるのです。

一体なぜ、巨大なシステムは失敗してしまうのでしょうか?

巨大システム失敗の根本原因とは

クリス・クリアフィールドとアンドラーシュ・ティルシックの共著『巨大システム失敗の本質』は、この疑問に答える画期的な一冊です。

著者たちは、様々な失敗事例を分析し、その根本原因が「システムの複雑性と結合性」にあることを明らかにしました。

つまり、個々の要素が複雑に絡み合い、一つの問題が連鎖的に他の問題を引き起こすという構造が、巨大システムの脆弱性を生み出しているのです。

さらに、著者たちは、私たちが普段頼りにしている「直感や自信」こそが、失敗を招く罠であると指摘します。

人間は、本能的に楽観的な予測を立て、都合の良い情報に耳を傾けがちです。

しかし、複雑なシステムにおいては、このような直感は誤った判断を導きかねません。

たとえ同じような状況だったとしても、全く違う関連性のない個別の事象として扱い、評価し、判断しなければ間違いを犯すのです。

 

組織崩壊を防ぐための3つのポイント

では、私たちはどのようにして巨大システムの失敗を防ぐことができるのでしょうか?

『巨大システム失敗の本質』は、以下の3つのポイントを提唱しています。

  1. 直感や自信に逆らう:楽観的な予測や都合の良い情報を疑い、客観的なデータに基づいた判断を心がける。この飛行機は先週は無事に飛んだが、今日は飛ばないかもしれない!
  2. 多様性を受け入れる:異なる視点を持つ人々を積極的に巻き込み、多角的な意見を取り入れる。素人や若手の意見は貴重です!
  3. 失敗から学ぶ:小さな失敗から教訓を抽出し、組織全体で共有する文化を醸成する。ボスであるという意識は、自分に権利があると錯覚させます!

これらのポイントは、組織のリーダーだけでなく、システムに関わるすべての人々に共通する教訓です。

この本を読むべき人は?

  • 企業の経営者やマネージャー
  • システムエンジニアやIT技術者
  • 複雑なプロジェクトに関わるすべての人々

本書は、複雑なシステムを理解し、そのリスクを管理するための実践的な知識を提供します。

著者紹介

  • クリス・クリアフィールド:危機管理コンサルタント、システム・ロジック社社長。ハーバード大学で物理学と生物学を学び、デリバティブトレーダー、パイロットとしての経験を持つ
  • アンドラーシュ・ティルシック:トロント大学ロートマン・スクール・オブ・マネジメント准教授。経営戦略論が専門で、組織の失敗に関する研究で数々の賞を受賞

二人の専門知識と経験が融合した本書は、まさに「巨大システム失敗」のバイブルと言えるでしょう。

 

『巨大システム失敗の本質』の感想

本書は、複雑な現代社会において、組織やシステムが直面するリスクを理解し、それを乗り越えるための道筋を示してくれます。

冷静に考えればとんでもないと思えることを、周りの意見に流されて、その場では判断してしまうかもしれない。

「集団に逆らうことが人間の進化という観点から見て生存に不利だということ」という記述は、数少ない先駆者として異論を上げることがどれほど大変かを教えてくれます。

あなたは、急いでいるスティーブ・ジョブズに対して、ここでは飛行機を飛ばせないから別の空港に行けと言えるだろうか?

私たち一人ひとりが、この本の教訓を胸に刻み、より安全で持続可能な社会を築いていくことが、今求められているのではないでしょうか。

いますぐ本書を手に取り、あなたの組織を「失敗の本質」から守りましょう!